【コラム】子供の頃から変わらないもの|映画『ナショナル・トレジャー』

幼少期は、よくアニキ達に置いて行かれた。かけっこ、サッカー、身長、ご飯を食べる早さ、、、数え始めたらキリがない程出てくる予感がする。「待ってよー!」なんて、よく音を上げていた。

チラシの間違い探しやトカゲを見つけ出すことはひたすらに早く、週末の金曜ロードショーで放送される映画が何かだって、アニキ達はすでに知っており、「何でそんななんでも知ってるの!?」と、どう足掻いても追いつけなかった。

「全然追いつけないなあ。」

走るニコラス・ケイジ|映画『ナショナル・トレジャー』
© 2004 Disney

アニキ達と出会ったきっかけは、親のバスケットボールの社会人チーム。自分の様な子供がいる親がチームメイトに居れば、当然練習だったり試合に一緒に行くようになり、そこで嫌でも顔を合わせるようになる。今でこそ出会いの思い出なんぞは頭の片隅にもスペースを与えられていない程だが、その子供たちの中で自分が一番下っ端であることはどうやら理解していた。

子供ながらに仲良く遊んでいるのだが、当然アニキ達は自分の知らない遊びを覚えており、そして何をして遊ぶにも自分より熟練度が間違いなく自分より遥かに高い。アニキ達を見習って試行錯誤してみるものの、やはり彼らには追い付けず、いつだって少し後ろで付いていくのがやっとだった。

それは大人になっても変わらずにある。いつまで経っても歳上のアニキ達は相変わらず歳上だし、自分の知らないことを何でも教えてくれる。

「全然追いつけないなあ。」

知識では追いつけないかもしれないけれど、かけっこしたら今なら・・・そんなことをふと思い付きながらも、アニキ達に会うのはいつだってワクワクする。

あなたの”ワクワク”はどこから?

私は喉から。

何言ってんねん、と思いながらも、それはあながち間違っていないのかもしれない。厳密に言うと、アニキ達が発する「言葉」にワクワクさせられる、ということには正解である。会う度に、どんな話を聞かしてくれるんだろう、どんなことを教えてくれるんだろう、と、その「言葉」を楽しみにする。「言葉」が自分に見せてくれる「新しい景色」が”ワクワク”の根源なのだ。

「新しい景色」にワクワクさせられるのは子供も大人も関係ない、「言葉」から来るものなんて決まりもない。百聞は一見に如かずというように、むしろ目で見て体験して感じることの方が多いのではないか。

宝探しはロマンか

想いに耽るニコラス・ケイジ|映画『ナショナル・トレジャー』
© 2004 Disney

「父さんが正しかったよ。」

幼い頃、何度も金曜ロードショーで見かけたニコラス・ケイジが言っていた。そういえば、映画『ナショナル・トレジャー』は本当に何回これ放送されるんだろう、と子供でも疑問に持つくらいやっていたな。それも相まって物語の流れや結末はよく覚えている、のに毎回という程に釘付けになって観ていた。なぜだろう、、物語の軸は宝探し。子供のそれではなく大人のものなので、激しい銃撃戦とかが繰り広げられるのかな、と思いきや、ニコラス・ケイジらがやっていることは、夢に見た宝を探しに行くシンプルな物語。当然、宝を探す道のりは謎に満ちており、そして主人公がその謎を解くための知識力は高い。ここまではよくある映画の設定なのだが、映画『ナショナル・トレジャー』のニコラス・ケイジの目は、間違いなくまだ見ぬ発見への「ワクワク」が溢れていた。

どこからか、当時の私は、自分がアニキ達から感じるワクワク感を、同じように画面に映るニコラス・ケイジを見て感じていたのかもしれない。たとえ宝の在り処を示す手掛かりが国規模で厳重保管されている物であっても、またそれを盗んで(お借りして)犯罪行為と見做されることがあっても、その「ワクワク」は抑えられない。むしろそれに駆り立てられていると言った方が正しいようにまで思える。

その「ワクワク」の先には何が待っているのか。宝を見つけたとして何かあるのか、大金持ちにでもなれるのか駆りぶんその宝が財宝や金銭的に価値のある物であれば、大金持ちにはなれるだろう。しかし、宝探しの果てが何かなんて誰にも分からず、辿り着いた者にしか分かり得ない。

では、なぜ「ワクワク」に駆り立てられて、あるかどうかも分からない宝探しにひたむきになれるのか。
それは、「ロマン」がそこにあるからではないか。
「ロマン」とは、夢や冒険心をもたらすものや、およそ実現しそうにない幻想的なもののことを言うが、まさにとっておきの言葉。「ロマン」があるからこそ宝探しができるのであって、もしなければ『ナショナル・トレジャー』は間違いなく駄作になっていたであろうし、ニコラス・ケイジの目はお先真っ暗で充血していたかもしれない。そこには大人子供の境界線なんてものはなく、むしろ子供の頃から変わらない純粋な心さえあれば、いつだって夢や冒険に旅立つことができる。さあ、今日はどんな「ワクワク」に出会うのかな。

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